2018年08月21日

『ペンギン・ハイウェイ』感想


トレーラーが打上花火の次にいいぞ

ということで先日公開された「ペンギンハイウェイ」の感想?記事です。
みんなで観た「夜は短し」では個人的にとんでもないことになったにも関わらず今作には物凄い期待をかけて鑑賞!!

(以下ネタバレ含む)






特に印象に残ったワンシーンを中心に、感想を書いています。





☆妹が泣くシーン:「死」について考えてしまう
台風の夜の日に、アオヤマ君の妹が「お母さんが死んじゃう」と泣き出すシーンが非常に印象的でした。


みなさんは「死」について考えたことはありますか?
誰もが通る道…なんでしょうか。
わざわざ友達に確認するようなことでもない経験、だったりしないでしょうか。

「誰もが通る道」から連想するのは「イニシエーション(initiation)」ということばですが、
イニシエーションの意味としては
『特定の集団や社会でその正式な成員として承認するための儀式。加入儀礼』(明鏡国語辞典より)
など、社会集団へ加入するための通過儀礼を指すケースがほとんどのようです。

「抜けそうな乳歯が気になる、抜ける」「女性のおっぱいが気になる」、そして「死について」…は実際はアオヤマ君の妹の体験ですが、
こうした体験は精神面のイニシエーションとして扱えるんじゃない…?程度のポジションらしいです。
(深追いすると宗教観に触れそうなのでほどほどに)

本作はアオヤマ君というひとりの少年と目線を合わせるために、
入学・卒業などの通過儀礼を通してではなく
ぼんやりとした、しかし確実に各々にある経験を散りばめて、独特の雰囲気を作り上げています。


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◆正直なところ、本作、退屈じゃなかった?
話変わって本作序盤の話。
作中とにかくアオヤマ君は賢いので、
観る側としては「賢いアオヤマ君が頑張ればなんとかなるやろ」と
フィクション上の主人公であるアオヤマ君に期待しつつ物語は進むと思います。

「研究」がひとつのテーマなのもあって
目撃した「現象」に対して、アオヤマ君が再現性を求め反復試行するシーンが何度もありました。
<海>はまったく意味不明なモノであり、
アオヤマ君が発見できるもの・できないものは観る側への情報として直結します。
なお本作は徹底してアオヤマ君目線で最後まで見届けられる作品となっていますが、
アオヤマ君は、意味不明な現象でもとりあえず受容して研究対象にするスタンスなので、
そこから外れて1から10まで理解しようとするとこの作品は難しくなってしまうのかもしれません。

アオヤマ君と同じ目線でありながらも、アオヤマ君自身は独特の観点を持ち、
またアオヤマ君は葛藤するキャラでもない。
この状態が維持されて淡々と物事が進むため、そこについて退屈さを抱くこともあるかもしれません。



★再考・妹が泣くシーン
そんなアオヤマ君のスタンスに揺れが生じるのが、「妹が泣くシーン」を含めた台風の日ではないでしょうか。
妹が泣くシーンには3つの要素があると考えます(プレゼンの常套句みたいになってしまった)。

@いまある現象そのものから反芻ばかりしていたことに気づかせる
「お母さんが死んじゃう」→今まさに(お姉さんと同様に)母親に危機が訪れている という反射的な思考を改める役割があると思います。
馬鹿正直に再現や反復思考からいったん離れ、「思いを馳せる」ことへのきっかけを生み出しています。
この時の対象は「死」というあまりにも直接的な概念なので、哲学にもならず怖くなってしまいますが。


Aアオヤマ君は「死」について理解している/この悲しい思いを経験している
これはストーリー的に必要な要素で、アオヤマ君は「死」や「別れ」について気付きを得ています。
クライマックスに向けて、アオヤマ君は別れの必然性を再認識しています。

また、作中に出てくる「エウレカ」は発見・解決による喜びを示すものですが、「死」への気づきは悲しみを招きます。
悲しみに暮れている妹にかける言葉が見つからないことへの戸惑いもあり、
科学者である一方で、等身大の人物としてのアオヤマ君も垣間見えます。


Bフィクション側から観る側へ「引きずり落とす」手法として
そして何よりも、アオヤマ君にもこうした「死」への思いを馳せる経験があることから、
フィクション側から観る我々の側に近づく瞬間のように思えました。
特に注目したいのは、
その瞬間はアオヤマ君が「失敗」や「挫折」をしているのではなく
妹への共感・やさしさをもって起こる点です

島村卯月が劣等感を覚える、成瀬順が恋に気づく ような物事の大きな転換ではなく、
それは日常風景の中でひっそりと訪れています。
非日常を過ごしていたからこそ唐突とも思えたこのシーンですが、日常を思わせる柔らかな表現と確かな存在感を放ち、素敵なワンシーンであったと考えます。

ここがペンギン・ハイウェイの見どころ!って感じではないかもですが…間違いなく好きなシーンです。
適当に流しちゃった人がいればもう一度みてね。







・おまけ
「夜は短し」をまったく引き摺らずに、声優選出もキャラクターにかなりマッチしていました。
釘宮も能登も久野ちゃんもすこなのだ…w

posted by よしえ at 00:07 | Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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